FEATURED STORY

Beyond The Canopy

屋久島縦走記

投稿者:田村 悠・2026年3月12日・読了時間 6分

屋久島に降り立った朝、空港はまだ雨に濡れていた。三日間の縦走の始まりは、いつもこうして少し不安げな空模様から始まる。だが森の奥へ進むにつれ、雲は葉の隙間からこぼれる光へと姿を変えていった。

千年を超える屋久杉たちは、ただそこに立っているだけで言葉を持たない説得力を放っていた。苔むした岩を踏みしめながら歩く一歩一歩が、まるで太古の時間に足を踏み入れるような感覚を運んでくる。樹冠を見上げると、幾重にも重なる緑の向こうに、切れ切れの空が見えた。

苔むした屋久杉の森

二日目の夜、山小屋の外に出ると満天の星が広がっていた。都会では決して見ることのできない密度の星々。同じ小屋に泊まっていた見知らぬ旅人と、言葉少なに星を見上げた時間は、この旅で最も贅沢なひとときだったかもしれない。

三日目、稜線に出て初めて海が見えた瞬間、なぜだか涙が出そうになった。樹冠の向こうにあったのは絶景だけではなく、自分自身と向き合う静かな時間そのものだったのだと思う。

「森を歩くという行為は、結局のところ自分自身の内側を歩くことなのかもしれない。」
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